糖尿病網膜症とは

糖尿病をもつ患者さんで、発症後も眼科を受診せず、血糖値の高い状態が持続することで起きる細小血管障害が原因となって起きる病気です。網膜にはたくさんの細小血管が集中しているので、高血糖による障害が起きやすいのです。糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、糖尿病神経障害と共に糖尿病三大合併症のひとつに数えられており、糖尿病になって数年~10数年後に発症すると言われています。

CS眼科-糖尿病網膜症とは

糖尿病網膜症は、糖尿病と同じように初期症状がほぼ現れません。さらに糖尿病と診断されてからも合併症として発症するまで時間を要することなどから、これといった眼症状がなければますます放置しやすくなるわけです。糖尿病自体いつ発症したかというのは多くの方はわかりません。そのため糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても定期的に眼科を受診するようにしてください。なお糖尿病治療では、血糖コントロールが最も重要で、これをしっかり行っていれば、糖尿病網膜症の予防にもなるので、特別なことをする必要はありません。

先にも述べましたが、糖尿病網膜症は初期の頃は自覚症状がほとんどみられません。自覚するようになると、目がかすむ、飛蚊症、視力低下などの症状がみられますが、このような状態にあると糖尿病網膜症の病状はかなり進行していると言えます。糖尿病を発症後、きちんと治療をしないと7~10年後には約半数の方が、15~20年後には約9割の方が糖尿病網膜症を発症すると考えられます。進行した糖尿病網膜症では、黄斑浮腫や網膜剥離、血管新生緑内障などを発症し、最悪の場合は失明することもあります。

治療について

糖尿病網膜症は、眼底検査、蛍光眼底造影検査、光干渉断層計(OCT)を行うことで診断をつけることができます。

進行度によって治療法が異なり、主に単純糖尿病網膜症(初期)、増殖前糖尿病網膜症(中期)、増殖糖尿病網膜症(後期)に分類されます。

単純糖尿病網膜症と診断された場合は、糖尿病治療による血糖コントロールをするだけで充分で、自覚症状が出ることもありません。ただ3~6ヵ月に1回は眼底検査を受けるようにしましょう。

増殖前糖尿病網膜症と診断されるケースは、網膜にある細小血管の様々な場所で血流の詰まりなどが現れている状態で、血流不足から酸素・栄養不足に陥った部分(網膜)には軟性白斑、網膜浮腫などがみられます。それでも自覚症状が少ないことから、増殖糖尿病網膜症へと進行しやすくなります。そのため網膜光凝固術(網膜にレーザー光を照射して、網膜の組織を凝固させることで、新生血管を抑制する)を行って、血流が途絶えたところから新生血管を発生させないようにしていきます。

増殖糖尿病網膜症(後期)では、網膜の血管が虚血状態となっているので、新生血管が発生しています。これが硝子体まで伸びると、それに引っ張られて出血するようになります(硝子体出血)。さらに新生血管によって増殖膜が発生し、これが網膜を引っ張ると牽引性網膜剥離が起きるなど様々な病態が引き起こされるようになります。治療については網膜光凝固術が中心となりますが、それでも進行が阻止できないという場合は網膜硝子体手術が行われます。

糖尿病網膜症による黄斑浮腫(黄斑部のむくみ)は視力低下に直結します。黄斑浮腫に対しては、抗VEGF硝子体注射が有効です。当院で抗VEGF硝子体注射の治療が可能です。

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